コツコの日記-日々のこと-

取り留めもなく日常を。

いつの間にか汚れていた心

布団に入って目の前の天井をみるでもなく見ているとふと頭によぎる昔の出来事

 

なんでこんなタイミングと思うが。考えても答えは出ないから考えない。

その思い出に潜ると、本当に自分がそんな事をしたのかと思うような思い出だった。

 

歳は17くらいだっただろうか。

バスで通学中、バス停に停車した際に足元に転がってきた琥珀色のブローチ。

私はバスを降り歩いていく人たちに向かって

 

「どなたか落とされてないですか!?」

と叫んだ

 

誰も反応せず、仕方なく手に残ったブローチをバスの運転手さんに渡して学校に向かった。

 

学校ではこんなことあったんだーと友達とその事について話していた。

 

翌日のお昼休みに校内放送で

 

「〇〇至急職員室まで来なさい」

と呼び出された。

 

何かしたかなと思って向かうと一人のお婆さんと生活指導の先生。

昨日の事はとっくに忘れていた私は何か呼び出されるような事をしたのかとドキッとした。

 

真面目で気が弱く、何もしてないのに道で警察官を見るとドキドキする人間である私は心拍数が急上昇した。

 

お婆さんは私の顔を見ると微笑んで手に持っていた大きな袋を私に差し出しながら

 

「本当にありがとう。大事なブローチだったの」と言った。

その時昨日バスで拾ったブローチの落とし主かと気づく

 

「お金だとダメだと思ったから」

と言って差し出してくる紙袋の中には見たこともない量の図書カードが入っていた。

 

その時の具体の感情は覚えていないが、怖かった気がする。どんなブローチを私は拾って、どんだけ金持ちのお婆さんだったんだろうか。

 

咄嗟に断った。

それは当然の反応だったように思う

受け取れない。

 

先生もそれに続いて断っていた。

流石に問題があるのかもしれない。

 

私もそんな為に拾ったわけでは無かったので一ミリも受け取る気持ちがなかったのはよく覚えている。あと恐怖。

 

お婆さんはそれでも渡そうとしてきたが、

 

「それを受け取ってしまうと私の行動に値段がついてしまうので受けとれません。私はそんなつもりで拾ったのでは無いのでそのお気持ちだけ頂きます。」といかにも優等生が言いそうな事を言った記憶がある。

 

お婆さんは諦めて、でも最後までお礼を言って去っていった。

 

天井をみながら思い出したのはこの記憶。

いま、この行動を自分が本当にしたのかと記憶を疑い出している。

 

現在の自分では考えられないからだ。

そんな時代の自分がいたんだなという懐かしさと、今では心が汚れてそんな行動をできないだろうという悲しさとが込み上げてくる。

 

いつから人の為に何かをできない人間になったのか。

自分本位で自分が幸せじゃないのに他人なんか幸せにできないだろうって思うようになったのか。今の自分なら確実にその図書カードを受け取る。

 

寝る前に嫌な記憶を思い出してしまった。

いや、この記憶を誇りに思えず、バツが悪い思いをしてしまう今の薄汚れた自分に嫌気がさしているだけだ。

 

無償で人に何かを出来ない心に変わってしまっている事を嘆き、寝ることにする。

 

願わくば、幸せな夢をみたい。

今幸せといえる夢は昔の自分の幸せではないだろうが。

それでも私は生きている。